アスペルガー症候群の特徴

 アスペルガー症候群の命名者であるローナ・ウィングによると、以下3点がアスペルガーの特徴とされます。
  (1)社会性の障害、または人とのかかわり方の質的障害
  (2)コミュニケーションの質的障害
  (3)イマジネーションの質的障害、あるいは柔軟性の苦手



(1)社会性の障害、または人とのかかわり方の質的障害

 アスペルガー症候群の方は、自分が所属する集団と行動や感情、常識を共有しにくく、このことを指して「社会性の障害がある」と表現されます。たとえば、人とのかかわり方において、以下のような特徴が見られます。

  ◇かかわり方が一方的(相手の反応により自分の気持ちや行動が変わる、という相互性が乏しい)
  ◇同年齢の子供と相互的な友だち関係が持てない
  ◇年齢相応の「常識」が身についていない
  ◇自分の感情に気づけない、概念化できない
  ◇相手の感情に気づけない、実感できない

   など、「知的な遅れのためにかかわりが幼い」だけでは説明がつかない独特さを持っています。「この子の行動は何歳児相当だね」と表現しきれない独特さが特徴の1つです。あるいは、「知能は3歳児相当なのに、ほかの子供との遊び方は1歳児並み」といった発達の偏りを指して「質的障害」といいます。



(2)コミュニケーションの質的障害

 アスペルガー症候群の方は、話しことば(言語性コミュニケーション)と話しことば以外の手段(非言語性コミュニケーション)のいずれにも質的障害が見られます。

  ◇独り言がきわだって多い、または内容が独特(果てしない実況中継など)
  ◇立場によりことばを変えることの困難
  ◇過度に厳密な話し方、年齢にそぐわない難しい言い回し
  ◇過度に写実的な擬音語
  ◇相手の頭のなかにある情報への配慮の困難
  ◇文脈での補いの乏しさ
  ◇慣用表現がわからない
  ◇視線の意味が読めない
  ◇指差しの意味が読めない
  ◇抑揚・ゼスチャー・体の向きの使い方などの不足、不適切さ

 大人になると独特さが消えていくものもあるので、単なる発達の遅れ(遅さ)ととらえられるものがある一方で、大人になっても残る独自性もあります(厳密でまわりくどい言い回し等)。



(3)イマジネーションの質的障害

 ここでいうイマジネーションは、創造性ではなく、純粋な想像能力を指します。「こうしたらこうなる」という結果、「こうだからこうなった」といういきさつ、「こうなるかもしれない」という可能性などを上手に扱うことの困難があります。「そのときどきで処理できる情報における、時間と空間の幅が狭い」と表現されている学者さんもいます。

  ◇いつもどおり、予測どおりを望む
  ◇不足の事態に臨機応変に対処することの苦手
  ◇考えや気持ちをリセットするのが苦手
  ◇新しいことに手を出したがらない
  ◇応用がきかない/原理・原則の抽出が苦手
  ◇自分なりの秩序を守りたい
  ◇人にも秩序を守ってほしい
  ◇興味のかたより

※以上、吉田友子先生著【「その子らしさ」を生かす子育て】を参考にさせていただきました。(索引一覧
※上記はウィングの定義をもとにしています。アメリカ精神医学会(APA)のや世界保健機構(WHO)なども
それぞれに診断基準を発表しており、内容は若干異なるようです。


療育についての私見

 個人的には(1)社会性の障害が本人にとって最も試練になるように思います。コミュニケーションやイマジネーションについては不得手こそ残っても、そうした仕事に就かなければ大丈夫で、むしろ他の得意を活かして十分に社会でやっていけるように感じるからです。職場になじめなかったり、いじめられたり、問題視されてしまったりするのは、「自分が所属する集団と行動や感情、常識を共有しにくい」という社会性の障害に起因していると思います。「相手が話しているときに割り込んだら怒られる」「みんなが悲しんでいるときに笑っていると何だコイツと思われる」などの社会常識のようなものであったり、「相手の感情(表情)を常に気にかけておく習慣」などをしっかり育てておくことが大人になってからの生きやすさにつながるのではないでしょうか。

 療育の観点からも、もし子供に発達障害の可能性を感じるのであれば、一度専門家に診てもらったほうがいいと思います。不安だからと目をそらすのではなく、心配だからこそしっかり見つめる。簡単なことではないですが、大切なことだと思います。(参考:子どもの発達障害の診断について



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