発達障害児が増えている理由

米国カリフォルニア州内で自閉症として登録された子供の数は、1980年代から1990年代にかけ210%増加したそうです。また正確な統計かは不明ですが、日本においても発達障害児が急増していると聞きます。なぜ発達障害児が増えているのかについて、発達障害の原因自体が明らかにされていないため、なぞのままとされていますが、私はおそらく化学物質による環境汚染と関連性があるのだろうと考えています。

まず第一に、発達障害が胎児期における「海馬の未発達」によるものであるということ。次に、いくつかの化学物質は「神経系の発達に悪影響がある」ということ。そして、「発達障害者は化学物質に弱いということ」。この三つの事実から、「先天的に化学物質の曝露に弱い人がいて、その人が胎児期に化学物質に曝されたとき、海馬の発達が不十分な状態で生まれる」という仮説を立てています。
(参考:アスペルガー症候群の原因

もちろん世の中的な認知が広がって、今までは「個性の強い子、変わった子」としてすまされていた子供達が、医師の診断を受け発達障害と認定されるケースが増えたことも理由の1つとは思うのですが、これだけでは冒頭に述べた自閉症児の登録数増加が説明がつきにくいと思います(自閉症は80年代であれ90年代であれ、はっきりと障害であるとわかるはずなので)。

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化学物質過敏症と遺伝子

前回記事「自閉症児とグルタチオン不活性」と合わせて読んでいただければと思いますが、今回は化学物質過敏症が遺伝子に関係しているという研究成果の紹介です。

化学物質過敏症患者は、CYP2D6とNAT2という2つの遺伝子に特徴があるそうです(トロント大学、マッケオンイエッセン、2004年)。

<以下要約>
CYP2D6遺伝子酵素は毒物の活性化又は不活性化に関与し、NAT2遺伝子酵素も解毒に関与する酵素。不活性なCYP2D6又は代謝速度が遅いNAT2の遺伝子をホモに持っている場合と比較して、活性の高いCYP2D6又はNAT2遺伝子をホモに持っている人は化学物質過敏症患者に多く見られた。また、有機リン系殺虫剤を解毒するパラオクソナーゼの活性の低い変異型である遺伝子も、化学物質過敏症患者が多く持っていた。
※以上、参考にさせていただきました:化学物質過敏性と遺伝的多形性

・過敏症患者は、毒物の活性や代謝に関する「遺伝子上の特徴」を持っている。
・自閉症児は毒物の代謝能力(グルタチオン活性)が低い。
・ある毒物は神経系統の発達に影響を及ぼす。
・自閉症は脳の海馬が胎児期に十分発達しなかったことにより起こる。

いずれも、点が線としてつながってくる感がある研究成果です。

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自閉症児とグルタチオン不活性

まだ出所の信頼性を十分に確認できていないのですが、自閉症児には「毒物の代謝能力」に関する有意な欠陥が認められるそうです。具体的にはグルタチオンという抗酸化物質が、健康な児童の31%以下であるとのこと(アーカンサス大学、ジル・ジャームス博士、2004年)。

グルタチオンは、体内の解毒作用を高める抗酸化物質です。「タチオン」という製品名で医薬品としても処方され、薬物中毒、アセトン血性嘔吐症、金属中毒、妊娠悪阻などの治療に用いられます。このグルタチオンが少ない(あるいは活性度が低い)ということは、有害な化学物質に曝されたとき、十分な代謝ができないことを意味します。

ここからは完全に私見ですが、発達障害の人にアレルギーや化学物質過敏症を呈す人が多い(と私は思うのですが)のは、彼らに毒物代謝能力が低いからではないかと。そして遺伝的にこういう気質を持った胎児が胎内で有害金属や化学物質の曝露を受けたとき、神経系統の発達が遅れて(海馬の発達が未成熟になり)、自閉症を呈するのではないかという仮説を持っています。(※参考:発達障害と海馬回旋遅滞症

このテーマについては今後も継続的に調査し、十分な信頼性を持った事実が確認できたら、本体サイトのほうでも取り上げたいと思います。

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障害か個性か

この子の言動は、障害か個性か。わが子に発達障害の疑いを持ったとき、多くの親は「障害なんて大げさ、ちょっと人と変わっているだけ。個性よ個性。」と考えるものだと思います。そして専門家による診断は受けず、なんとかやれている子どもを見て「大丈夫、大丈夫」と時が過ぎていきます。

障害か、個性か。これを自問するとき、正確にいうと私達は「この子は障害者なのか、障害者じゃないのか」について考えているのだと思います。そして当然ながら障害者だとは認めたくありません。言葉だって普通に話すし、元気に遊んでいる。この子が障害者のはずがない、と。

いっぽう、ある心療内科の先生の統計に、発達障害の子どもが成人するにつれ、うつ病を合併するケースが78%、不安障害36%、依存症44%。合併症なしはわずか4%というものがあります。また、実際に自信を無くし、心がボロボロに傷ついてしまっているASの成人が数多く存在しています。

こうした事実をもとに考えると、ちゃんと「障害がある」と認めてあげること。つまり、ほかの子が当たり前にできることが、いつまでたってもできないのは、「この子の努力不足ではない」とわかってあげること。このことがとても大切なのではないかと私は思います。

ASの子が、場にふさわしい行動がとれなかったときに怒るのは、手が不自由な子が箸を落とすたびに「なんで持てないの?」「何度注意したらわかるの?」と叱責しているようなものだと思うことがあります。(不適切なたとえでごめんなさい。でもそれくらい子どもは辛い思いをしている可能性があると知ってほしいのです)。

いっぽう「あーこの子はこういう個性なんだな」と放置するのも危険だと思います。まず家の外でさんざん傷ついて、自己評価を下げます。次に、これ以上傷つかないよう人と距離を置いてふるまうようになります。その結果、いっこうに社会性が育たず、大人になって大変な苦労をすることになります。

適切な療育を施すために、障害は障害として認められる必要があるのだと、専門書には繰り返し書いてあります。私もそう思います。そもそも個性というのは、その子に限らず、すべての子に存在するものなのですから、「障害か個性か」という問い自体がおかしいのかもしれません。また「障害があるか、ないか」が重要なのでもないと思います。その子の親として一番知っておきたいのは、「この子には特別な支援が必要かどうか」ではないでしょうか。

※本サイトも、ご参考まで。(子どもの発達障害の診断について

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2012/06/22 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:AS雑感

自閉症スペクトラムと扁桃体(1)

アスペルガー症候群をはじめとする自閉症スペクトラムでは、脳の海馬が未成熟であることが明らかになってきています。海馬の発達が遅れたまま止まってしまうために、海馬周辺の脳内ネットワークに発達の偏りが出て、それがさまざまな自閉症状を引き起こすと考えられています。(詳しくは本体サイト:ASは脳の使い方が違う?

知能や言語に問題がない自閉症スペクトラム(アスペルガー等)の場合、海馬の前のほうにだけ発達の遅れがあり、そのために扁桃体の周辺があまり発達しません。扁桃体は主に情動(感情)に関連する器官でいろんな機能がありますが、そのなかの1つに「相手の感情をリアルタイムでモニタリングする機能」というものがあるそうです。この能力が発達しづらいことが、「空気が読めない」「相互的なコミュニケーションが難しい」などの障害に強く関係しているのではないかと私は考えています。

赤ちゃんは小さなころから人間の顔(表情)には関心があり、微妙な表情をよく見ているという話を聞いたことがありますが、そういえばASの傾向がある子は赤ちゃんのときからあまり表情を見ていない気がします。おそらくですが、「表情を読み取る力」というのが、「相手の感情をリアルタイムでモニタリングする機能」と密接に関係していて、かつ社会性や非言語的なコミュニケーションの土台となるものなのではないでしょうか。

たとえば「表情を読み取る」ことができて初めて、「あれ?何でこの人は言ってることと表情にギャップがあるんだろう→言葉は必ずしも心と一緒ではないんだな」ということを学習するはずですし、「言葉以外にも大事なコミュニケーション方法があるんだな→暗黙の了解や社会常識に気づく」という発展をしていくのだと思います。ASの場合はこうした様々なコミュニケーションの土台となる能力が発達しづらいために、独特のコミュニケーション手法を開発していく(いかざるを得ない)のだと思います。

ASは表情をコミュニケーションの手段として意識していないことが多いので、笑顔を作ったり、イライラサインを発したりすることもない(気づくこともない)。言葉で自分が感じたことをできるだけ正確に伝えたいと思っているので、言葉使いが妙に厳密になったり、周囲からは理屈っぽく聞こえたりする。・・・あくまで仮説ですが、「相手の感情を読み取る力」という土台が無いために、コミュニケーションが独特なものになっている気がするのです。

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高機能自閉症・アスペルガー症候群「その子らしさ」を生かす子育て

横浜発達クリニックの吉田友子先生の著書(2003年)。高機能自閉症・アスペルガー症候群の子を持つ親のため、またそうした子供を療育する立場にある大人のために書かれた本です。

★本紙から抜粋

「子どもの発達について心配を感じたとき、
 保護者はそれが本当に心配すべきことなのかどうかをまず迷います。」

「あなたとあなたの子どもの努力が実を結ぶような
 医学的情報を提供したい。それが本書の目的です。」

「私たちはレッテルを貼るために評価するのではありません。
 成果が上がりにくいことの原因が、子どもの努力不足にあるのではなく
 能力的な不得手にあると気づく。努力が成果に結びつきやすい方法を考える。
 ほかの子どもがしていない苦労や努力をしているという事実をいっしょに味わい、
 手に入れた成果をいっしょに喜ぶ。
 それが子どもを丸ごと受け止めるということです。
 それにはまず能力障害が能力障害と正確に認識されることが大前提です。」

「不安だからと目をそらすよりも、心配だからこそしっかりと見つめる。
 きっとそこに解決の糸口があります。」

臨床医として多くの親、子供に向き合ってきた方だからこそ書ける、実践的でかつアスペルガーの本質をとらえた本だと思います。

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