海馬とは

 海馬は側頭葉の内側に位置し、脳側室と呼ばれる脳脊髄液で満たされた空間(脳室)のなかに、左右に一対ずつ、前後約5〜8cmの長さで伸びる大脳辺縁系の一部です(ちょうど小指くらいの大きさ)。記憶に深く関わっているとされますが、まだ働きの全容は解明されていません。アルツハイマー病における最初の病変部位でもあり、心的外傷後ストレス障害、うつ病の患者にはその萎縮が確認されるなど、近年様々な疾患との関連性が明らかになってきています。

※Wikipedia「脳(海馬)」より画像引用。索引一覧はこちら


海馬は回旋しながら成長(発達)していく


 海馬を正面からMRIで撮影すると、右図の赤色の部分がZ字(またはS字)に折れ曲がっていることが確認できます。この折れ曲がりのことを海馬の「回旋」と呼びます。


 この「回旋」が、胎生10〜14週目くらいではまだ回りきってはおらず、左のようにL字(または逆L字)になっています。このL字の縦棒の真ん中あたりが外側に張り出してきて屈折し、横棒の端とくっつくように折りたたまれて、産まれるときにはほぼ上記のような回旋を構成しているのが通常の発達過程です。




回旋が不十分なまま成長が止まる

 「海馬回旋遅滞症」とは、海馬の回旋が途中で止まり、発達が不十分な症状を指します。左右の両方に回旋の遅滞があることはまれで(この場合は重度の自閉症となる)、97.3%は左側だけに遅滞を持つため、MRIで撮影すると、多くの場合、片方だけが水平まで折れ曲がっていない状態として確認できます(右イメージ図の緑線の角度に注目)。


 加藤医師の研究では、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)と認定された方100人の脳画像の98%に海馬回旋遅滞症が認められました。また海馬の前のほう(扁桃体周辺)に遅滞がある場合にはコミュニケーション障害が現れ、真ん中から後ろのほうに遅滞がある場合は知能障害が現れることが確認されたのです。

※論文「海馬回旋遅滞症による広汎性発達障害」より。索引一覧はこちら

得手不得手のギャップが大きい「アスペルガー症候群の脳」

 知能障害がないアスペルガー症候群では、海馬の前のほうに回旋の遅滞があり、扁桃体周辺の神経ネットワークが未発達な場合が多いそうです。扁桃体には相手の感情をモニタリングする(相手の感情と瞬時に同期する)機能があるため、ここが先天的に発達しづらいことによって、表情や空気を読んだり、言葉の外にある意図を汲み取ったりといった「(非言語性の)コミュニケーション」に困難を生じさせていると考えられています。


 海馬回旋が不十分なことにより発達しづらいネットワークがある一方で、逆にネットワークが通りやすい(スペースに余裕がある)部分もあるため、たとえば机上の勉強などにおいては定型発達の方よりも高いスコアを示すと考えられています。いわば、脳のなかで「得手不得手のギャップ」が大きいのがアスペルガー症候群の脳が持つ特徴です。


 またその脳は、個人個人で大きく特徴が異なるそうです。扁桃体での不得手を右脳前頭葉を使ってカバーしたり、聴覚記憶の不得手を視覚記憶により補ったり。つながりにくいネットーワークを人それぞれに別の部位で補いながら、独自の脳を形成していくためと考えられています。


 海馬回旋遅滞症の発見者であり、脳画像診断の専門医でもある加藤先生は、専門のクリニックを設立し、直接ひとりひとりの「脳」を鑑定されているので、ご興味がある方は一度お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。


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 ※上記クリニック以外に、加藤先生が主催する脳の学校でも鑑定を行っています。



アスペルガー症候群と脳


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