自閉症スペクトラムと扁桃体(1)

アスペルガー症候群をはじめとする自閉症スペクトラムでは、脳の海馬が未成熟であることが明らかになってきています。海馬の発達が遅れたまま止まってしまうために、海馬周辺の脳内ネットワークに発達の偏りが出て、それがさまざまな自閉症状を引き起こすと考えられています。(詳しくは本体サイト:ASは脳の使い方が違う?

知能や言語に問題がない自閉症スペクトラム(アスペルガー等)の場合、海馬の前のほうにだけ発達の遅れがあり、そのために扁桃体の周辺があまり発達しません。扁桃体は主に情動(感情)に関連する器官でいろんな機能がありますが、そのなかの1つに「相手の感情をリアルタイムでモニタリングする機能」というものがあるそうです。この能力が発達しづらいことが、「空気が読めない」「相互的なコミュニケーションが難しい」などの障害に強く関係しているのではないかと私は考えています。

赤ちゃんは小さなころから人間の顔(表情)には関心があり、微妙な表情をよく見ているという話を聞いたことがありますが、そういえばASの傾向がある子は赤ちゃんのときからあまり表情を見ていない気がします。おそらくですが、「表情を読み取る力」というのが、「相手の感情をリアルタイムでモニタリングする機能」と密接に関係していて、かつ社会性や非言語的なコミュニケーションの土台となるものなのではないでしょうか。

たとえば「表情を読み取る」ことができて初めて、「あれ?何でこの人は言ってることと表情にギャップがあるんだろう→言葉は必ずしも心と一緒ではないんだな」ということを学習するはずですし、「言葉以外にも大事なコミュニケーション方法があるんだな→暗黙の了解や社会常識に気づく」という発展をしていくのだと思います。ASの場合はこうした様々なコミュニケーションの土台となる能力が発達しづらいために、独特のコミュニケーション手法を開発していく(いかざるを得ない)のだと思います。

ASは表情をコミュニケーションの手段として意識していないことが多いので、笑顔を作ったり、イライラサインを発したりすることもない(気づくこともない)。言葉で自分が感じたことをできるだけ正確に伝えたいと思っているので、言葉使いが妙に厳密になったり、周囲からは理屈っぽく聞こえたりする。・・・あくまで仮説ですが、「相手の感情を読み取る力」という土台が無いために、コミュニケーションが独特なものになっている気がするのです。

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2012/06/21 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:自閉症スペクトラムと扁桃体